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THE IRON MASK

会期:2025-2-27(木) ~ 2025-3-09(日)
作家:尾崎いろは

2024 年11 月19 日
現代資本主義の権化として宇宙へと打ち上げられた船。貨物は、たった一本のバナナだった。その翌日20 日、Sotheb y’s のオークション。群がる投資家、熱を帯びる視線。620 万ドルの値で競り落とされたのは奇しくもまた、バナナであった。現代の神話は、こうして新たなページを刻んだ。

ファルスはどこへ向かうのか。

ホルストの組曲『惑星』が幕を開ける。その第一楽章、副題は「戦争をもたらす者」。それは単なる破壊の予兆ではない。力と支配、闘争をめぐる人間の本質が、幾度となく歴史の闇から立ち現れる。そして今赤い星は、再び人類の夢と野望の象徴として輝く。

かつてのSF は、空想の産物ではなくなった。近代が描いた未来は、現実に呑み込まれ、世界の命運を左右する原動力へと変貌を遂げた。私たちの未来を握る彼の鉄の仮面(IRON MASK) が外れるそのとき、その顔は何を語るのか。希望の光か。それとも、新たな力の物語に潜む冷笑か。2025 年、歴史はもう一度試される。


尾崎いろはは複数のメディアを横断しながら、人間の繰り返される欲望の史実を捉え、社会通念とされているシンボリズムの倒錯や転覆を主に行う。その手法には、ポップアートやシミュレーショニズムが行った視覚文化の再生産と接点が見られるが、彼の作品は、それらの手法を更新しながら、より根源的な「繰り返し」の力学へと向かう。

ポップアートがマスイメージの流通に着目し、シミュレーショニズムがオリジナルとコピーの関係を解体したとすれば、尾崎の作品は、イメージが歴史の中で繰り返されるたびに生じる微細な変化や意味の転倒に焦点を当てる。それは単なる視覚的な反復ではなく、美術史において何度も立ち上がる形式やモチーフが、時代の文脈によってどのように変容するのかを浮かび上がらせるものだ。

歴史の中でイメージが繰り返されるとき、それは単なる複製ではなく、新たな意味の層を帯びながら変奏される。尾崎の作品もまた、その美術史的な運動の中に位置しながら、繰り返しの中に潜む変化の契機を探る試みとしてある。マーク・トウェインの言葉を借りれば歴史は繰り返さないが、韻を踏む。それは、美術においてもまた同じことである。

キュレーター:谷口雄基

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